みなさんこんにちは!(^^)
DOJOサポーター関東支部で空自OBのKです。
ベイルアウトという言葉を知っている人は飛行機好きな人が多いかもしれません。
これは緊急脱出するという意味でパイロットが墜落の危険を感じ、航空機からパラシュートで脱出する時に発する言葉です。
平成11年11月22日13時42分14秒、飛行訓練を終了し入間基地着陸まであと数分という地点(高度1000フィート,地上約300m)で、中川2佐は「ベイルアウト!」と宣言します。
燃料漏れによるエンジン火災が発生したためです。
推力を失い、急激に高度が下がっていくT-33Aには中川2佐と門屋3佐が搭乗していました。おそらくこの時点で言葉通りに脱出していれば助かっていたと思われます。
しかし、二人は脱出しませんでした。なぜならこの時点ではまだ前方に住宅地が広がっていたからです。
42分27秒、さらに高度を落とし続け地上700フィート(約213m)まで達した時にたまらず、再度「ベイルアウト!」と発します。
しかし、まだ二人は脱出せず入間川河川敷に航空機を誘導しようと試みます。結局脱出したのは高圧線に接触直前の地上約60m地点でした。航空機は河川敷のゴルフ場に墜落し、人的被害はありませんでした。しかし、地上に激突した2名のパイロットは殉職されました。
今でこそ0m地点でも強制的にパラシュートを開かせること出来るため無事脱出できますが、この古い機体(1954年製の米軍供与機)では1000フィート(約300m)以上の高度が必要だと言われています。
しかし、二人は助からないとわかっていても緊急脱出します。これは整備員のためでもあります。脱出しなければ、整備不良が原因で脱出できなかったと疑いがもたれるからです。
当時、私は関東のレーダーサイトで勤務しており、入間管制塔での「ベイルアウト!」のやりとりこそ聞いていませんが、訓練空域での飛行訓練はレーダーで見ていたため特に印象に残っています。
自分の命より大切なもの、価値あるものを身をもって教えられた気がしました。
この事故については当時報道された時のことを覚えていますが、殉職された中川2佐、門屋3佐に対する扱いがものすごく冷淡だったことが凄く印象に残っています。
報道で最も大きかったのは墜落時に送電線が切断されて大規模停電が起きたことで、二人が住宅地への墜落を避けるために脱出が遅れたことに対する扱いは極めて小さいもので、共産党や反戦平和団体はそのことに対する言及もせず、自衛隊を非難していました。
これこそ、イデオロギー化した「反戦平和」の醜さの典型例と言えるでしょう。
あの頃に比べて、左翼反戦団体の自衛隊蔑視発言に対する、世論の賛同はめっきり減ったと思います。ただそれでも、殉職自衛官の慰霊のあり方など、考えなければならないことはまだまだあります。
だから、思想し続けなければいけないわけですね。(時浦)